
はじめに
朝の6時すぎ。まだ町は静けさに包まれ、夜明けの涼しい風が残る時間帯。私は霧島連山の最高峰・韓国岳(からくにだけ)へ登るべく、自宅を出発しました。
「今日は登れるのだろうか?」――そんな不安が頭をよぎるのは、数日前から続く不安定な天気予報のせいです。前夜のニュースでは「雨の可能性あり」とのこと。果たして頂上から景色を望めるのか、半ば賭けのような気持ちでハンドルを握りました。
しかし、この日の物語は予想外の展開から始まります。
出発から登山口まで
山間部へ差し掛かったとき、思わぬ知らせが飛び込んできました。電光掲示板を見ると、前日の大雨で道路が通行止めになっているというのです。まっすぐ行けるはずの道は閉ざされ、やむなく霧島神宮経由の迂回ルートを選択。
正直、「今日はやめておいた方がいいのでは」と心が揺らぎました。しかし、せっかくここまで来たのです。むしろ「試されている」と感じ、ハンドルを握る手に力を込めました。
そしてそのとき――道路脇に現れたのが、野生のシカでした。(とっさだったので、写真は撮れずじまい・・)
霧のような朝もやの中にたたずむ姿は幻想的で、思わず車を止めて見入ってしまいました。険しい道のりの先に待つ小さな出会い。これだけで今日の登山が特別になる予感がしました。
そうして予定より少し遅れて、午前7時半すぎに登山口へ到着。空を見上げると、そこには雲ひとつない青空が広がっていました。まるで「試練を越えたご褒美」のように、最高の登山日和が待っていたのです。
登山開始(7:40頃)
準備運動を済ませ、韓国岳登山口から一歩を踏み出した瞬間、森の香りが全身を包み込みました。前日の雨で潤った大地と木々は、太陽の光を浴びて輝き、緑の粒子が舞うようにきらめいていました。

登山序盤は比較的なだらかな道。鳥のさえずりや、風に揺れる枝葉の音がBGMとなり、歩を進めるたびに体と心が軽くなっていきます。

中腹にて ― 森と光のコントラスト
登山開始から30分ほど。木々の合間から見える景色が少しずつ広がり始めました。谷間には霧がまだ残っており、そこに朝日が差し込むと、金色のベールのように山肌を照らしていました。

立ち止まり、麦茶を口に含んで深呼吸。ここまでで汗が額を流れ落ちるほど。けれど不思議と疲労感はなく、「今日は最後まで登れる」という確信が心に芽生えていました。
急登に挑む
標高が上がるにつれ、道は険しさを増していきます。岩場が連なり、足元は滑りやすくなります。呼吸も荒くなり、心臓の鼓動が速まるのを感じながら、一歩一歩慎重に足を置きました。

しかし見上げれば、真っ青な空がどこまでも続いています。木々の切れ間から差し込む光に励まされるように、黙々と登り続けました。



韓国岳山頂(9:30頃)
そしてついに標高1,700m、韓国岳の山頂へ到着。
そこには――想像を超える絶景が待っていました。
目の前には堂々たる新燃岳。その火口付近からは白い湯気が立ち昇り、火山活動の力強さを肌で感じます。振り返れば高千穂峰、遠くには桜島までもが青空の下にくっきりと浮かんでいました。




「来てよかった」――心の底からそう思いました。汗だくの体も、この瞬間にはすべてが報われた気がします。

山頂でのひととき
山頂では持参した麦茶を飲み、少し腰を下ろして休憩。吹き抜ける風は涼しく、汗をかいた体に心地よく染みわたります。
他の登山者とも少し言葉を交わし、互いの健闘を讃え合いました。見知らぬ人同士でも、同じ山を登った者同士には不思議な連帯感が生まれるのです。

下山(10:00~11:00)
名残惜しくも下山開始。下りは足元に注意が必要でしたが、快晴の空の下で景色を眺めながらの下山は格別でした。途中で振り返ると、山頂が再び雲に覆われ始めており、「ちょうどいい時間に登れた」と思わず笑顔になりました。

午前11時前には登山口に無事到着。全身汗びっしょりですが、心地よい達成感に包まれていました。


登山を終えて
今回の登山は、朝の通行止めや迂回といったアクシデントから始まりました。しかしその先に待っていたのは、雲ひとつない青空と、雄大な韓国岳の絶景でした。

野生のシカとの出会い、森の清々しい空気、そして山頂からの火山の姿。すべてが「自然の力強さと優しさ」を教えてくれた気がします。
「登る前の不安よりも、登った後の爽快感が勝る」――これこそが登山の魅力ではないでしょうか。

おわりに
韓国岳は、霧島連山の中でも特に人気の高い山です。しかし実際に登ってみると、人気の理由は一目瞭然でした。
登山口からのアプローチの良さ、自然豊かな森、そして山頂からの圧倒的な眺望。すべてが揃っていて、初心者でも挑戦しやすいながら、しっかりと達成感を得られる山。それが韓国岳です。
これから霧島へ訪れる方がいたら、ぜひ快晴の日を狙って登ってみてください。きっと心に残る特別な一日になるでしょう。











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