今、法律改正が慌ただしく動いている。
その一つに、民法の改正だ。
司法書士を目指している中で、この改正からは目が離さない。
いろんなことがあっての、今回の共同親権の導入に至るまでの経過を
今日は探っていきたいと思う。
民法という法律をご存じでしょうか?
生活していく中で、物を買ったり、家を借りたりする取引が欠かせません。
しかし、こちらはすでに代金を支払っているのに、相手が品物をなかなか引き渡してくれなかったり、
家を貸しているのに借りた人が家賃を払ってくれなかったりと、
トラブルが生じることがあり得ます。
このようなトラブルをスムーズに解決するためには、
一定のルールが必要になってきます。
そのルールが民法なのです。
つまり、民法は社会生活の中で生じた利害の対立を調整する方法を明らかにしている法律なのです。
民法は、財産法と家族法に分かれています。
今回の共同親権の改正は、この民法の家族法の中での、改正ということになります。
離婚後も両親の双方に親権を認める
いわゆる ”共同親権” の導入を柱とした改正民法が5月17日に、成立しました。
では、共同親権とは一体何なのでしょう。
共同親権とは、未成年の子どもについて父と母の双方が共同して親権を行使する制度です。
現在の日本の法制度では、婚姻中の父母に関しては共同親権が認められていますが、
離婚後は、父または母のどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。
このような制度を「単独親権」といいます。
今回改正が行われたのは、離婚後も父と母の双方が子どもの親権を持つという意味での共同親権なのです。
共同親権が導入された場合には、以下のようなメリットがあります。
✔ 離婚時の親権争いを避けることができる
今は、離婚時に父または母のどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。
父と母の双方が子どもの親権を希望する場合、話し合いや調停では解決できず、
離婚訴訟にまで発展することも珍しくありません。
このような場合、親権者の争いを解決するまで長期間を要するので、子どもの精神的負担も大きくなります。
共同親権の導入により、このような親権争いが少なくなるので、
離婚問題の主要な争点が親権者の争いである場合には、早期に解決することが可能になることが考えられます。
✔ 離婚後も協力して子育てができる
共同親権では、離婚後も父と母の双方が子どもを育てる義務と責任を有しています。
そのため、離婚後もお互いに協力して子育てを行うことができますので、どちらか一方に負担が偏ることはありません。
また、子どもと別々に暮らす親であっても、定期的に子どもに関わることができますので、離婚後の面会などに
関するトラブルも少なくなることが考えられます。
✔ 両親の教育方針が対立して、意思決定が難航する親の教育方針が対立し、意思決定が難航する
単独親権では、子どもの教育に関する事項について親権者がすべて単独で決めることができるため、
スムーズな意思決定が可能です。
しかし、共同親権では父と母の双方に親権がありますので、
常にお互いが話し合って決めていかなければなりません。
従って、教育方針で対立が生じた場合には、スムーズな意思決定ができず、
子どもに対して不利益が生じるおそれがあります。
✔ DVやモラハラから避けられない
単独親権であれば、離婚をすればDVやモラハラをしていた配偶者から逃れることが可能です。
しかし、共同親権だと、離婚後もDVやモラハラをしていた配偶者と子どものことに関して
連絡を取り合わなければなりませんので、再びDVやモラハラの被害を受けるリスクが生じます。
改正民法では、DVや虐待があると裁判所が認めた場合、単独親権にしなければならないとされています。
しかし、裁判所がどのような基準で認定するのかといった点への懸念が根強く、
子どもが不利益を受けないように行政や福祉などに充実した支援を求めることも盛り込まれました。
このような裁判所の体制や行政・福祉の支援について、施行までにどこまで整備されるかも課題となります。
✔ 既に離婚している人には適用されるの?
共同親権が導入される前にすでに離婚している夫婦は、単独親権を定めた現行の民法が適用されていますので、
離婚時にどちらか一方を親権者に定めているはずです。
共同親権が導入されたとしても遡及適用はされませんので、
すでに離婚をして単独親権になっている人が、当然に共同親権に変更されることはありません。
ただ、単独親権に不満がある父または母は、家庭裁判所に親権者変更の調停・審判の申立てをすることにより、
共同親権への変更を求めることも可能とされています。
ただし、共同親権への変更により、
子どもや元配偶者に悪影響を及ぼすおそれがある場合には、共同親権への変更は認められないことになっています。
✔ 再婚した場合はどうなるの?
子連れで再婚をする場合、再婚相手と子どもとの間で養子縁組をするケースが多いようです。
現行法では、養子が未成年であった場合、養親の親権に服すると定められていますので(民法818条2項)、
離婚により単独親権になった場合でも、養子縁組により実親と養親との共同親権となります。
共同親権が導入されたことで、
共同親権とされた実親と養子縁組をした養親との親権の関係が問題になりますが、
改正民法では、養親および養親と再婚した配偶者(実親)の共同親権になることになりました。
なお、養子となる子どもが15歳未満の場合、
子どもの法定代理人である親権者の承諾が必要になります。
共同親権だと父と母双方の承諾が必要になりますが、
再婚を快く思わない側から養子縁組に関して承諾を得られない可能性があります。
このような場合には家庭裁判所に申し立てをすることにより、
父または母のどちらか一方の承諾で足りる旨の決定をすることができるとされています。
「いつも向こう(親権者)の気分次第で会えたり、会えなかったりというのがずっと続いていて・・」
「いわゆる妻の浮気と、僕に対する暴力をしていたにもかかわらず、結局1年半以上子どもに会わせてもらえませんでした」
「約5年前、娘2人を連れ去られました。ばったり娘と会うと『家に帰りたい』『パパの家に戻りたい』そういう発言を正直聞いています」
「私は元夫に暴力を受けて、そのときに無理やり離婚届を書かされて、相手が親権者となってしまいました。ただその相手が私の子どもを連れ去りまして、どこにいるのかも分かりませんし、ずっと会えていない状況です」
「(DV)加害者側は『やってない』と言うし、被害者側は『受けて恐ろしい』と。被害者側の気持ちに立って、安心安全を確保するような運用をすべき。不断の見直しをしながら、最新の海外の経験とか工夫も取り入れ運用や支援をしっかりとすることが、むしろ法制度が狙うところの実現に向かうのでは」
民法の改正と関連して、裁判員裁判に関しても、開始から15年を迎える。
市民が刑事裁判に参加する裁判員制度の開始から21日で15年。
今年2月までに裁判員9万2557人、体調不良時などに交代する補充裁判員3万1460人の計12万人超が参加したという。
厚生労働省によると、「裁判員休暇」の導入企業は5割にとどまり、より市民が参加しやすい環境づくりが課題となる。
裁判員制度は2009年5月、地裁で開かれる刑事裁判に市民感覚を反映させる目的で始まった。
くじで選ばれた市民が裁判員となり、裁判官とともに被告は有罪か無罪か、有罪の場合はどんな刑罰を科すかを決める。
2月までに裁かれた被告は1万6387人。
最高裁の調べでは、性犯罪や児童虐待などの量刑が導入前より重い傾向が続いている。
成人年齢の引き下げに伴い、昨年からは18、19歳も裁判員に選ばれるようになり、
昨年は少なくとも26人が10代で裁判員を務めた。
裁判員は原則辞退できないが、法令で辞退理由が定められている。
候補者の名簿に載り、実際に裁判員に選任されるまでの間、複数回、辞退を申し立てる機会はある。
すべての段階を通じて辞退が認められた理由で最も多いのは、「70歳以上・学生など」だった。
だが、最終的に裁判員に選任される当日に限れば、「事業での重要用務」がトップとなり、全体の半数を占める。
当日まで仕事の調整をしたものの、都合がつかず、やむをえず辞退している状況がうかがわれる。
企業1万社を対象に行った厚労省の調査では、裁判員休暇を「導入している」と答えた企業は50.4%にとどまった。
逆に「導入しておらず、予定もない」とした企業は35.3%に上った。
正社員5千人への調査では、47.2%が「裁判員特別休暇を設けてほしい」と求めていた。
民法の改正に、裁判員裁判15年。
これからも法律に目が離せない・・・
コメント欄