半導体世界最大手TSMC~熊本工場がいよいよ始動~
半導体受託生産の世界でも最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が、国内初となる工場を、熊本県菊陽町に第一工場を建て、開所式が開かれた。
このプロジェクトは、年内に建設を始める第二工場と合わせ、政府が約1兆2千億円を助成する国家的プロジェクトである。
先端半導体のサプライチェーンを強め、台湾有事に備えて、経済安全保障を強化するのが最大のねらい。
今後、量産開始に向けて、生産ラインの立ち上げを急ぐという。
岸田首相も「半導体はデジタル化と脱炭素化に必要不可欠なテクノロジーだ」と意欲を示して、第二工場にも財政支援を決めたと発表。
日本と台湾がタッグを組み、半導体製造を進めていく。
第一工場では、日本企業が製造できない回路線幅12~28ナノメートル(ナノは10億分の一)相当のロジック半導体を生産する。
ロジック半導体とは、スマートフォンやパソコンに搭載され、コンピューターの頭脳となる半導体だ。
近年は人工知能(AI)に進化に伴い、需要が急速に高まっている。
データを記憶保持するメモリー半導体や、電力を制御するパワー半導体などと区別される。
投資額は、なんと約86億ドル(約1兆2900億円)。
政府が最大4760億円を補助すると言われている。
TSMCは、第二工場も熊本県に建設すると正式に発表した。
2027年末に量産を始めるという。
第一工場と合わせ、6~40ナノメートル相当の製品を手掛ける。
雇用は合計3400人以上が見込まれている。
総投資額は200億ドルを超える見通しだ。
「今は地政学の時代。台湾側の期待は安保上の協力だ」
台湾の専門家は、財政支援が日本進出の決め手ではないことを主張している。
あくまで、中国の台湾への有事を避けるための、一手だということだと思う。
それだけ、日本は治安の面で優れている。
また、なんといっても、水が豊富。
第一工場だけで、一日当たり約8500トンの地下水を使う計画を立てている。
凄まじい水の量だ。
梅雨時期は、九州は水には困らない。それも見据えての建設なのだろう。
台湾のメディアによると、日本と米国、ドイツの3か国で増強し、
2028年には海外分が全生産の能力の約2割を占める見通しだという。
2027年に、熊本県に第二工場を稼働する計画もあって、日本の存在感がますます高まっている。
TSMCは、まずアメリカで建設計画を開始した。
アリゾナ州フェニックス工場が先行したが、人手不足やコスト上昇などが原因で、建設が遅れ、
結果的に熊本工場が先に実現。
なぜ、アメリカを加速させる必要があるのか。
それは、米軍の戦闘機やミサイルなどに不可欠な半導体は台湾でTSMCが製造しているから。
台湾情勢の緊迫化など安全保障上の理由から米国産化を加速させる必要があると言われている。
日米で生産する製品は異なるとされているが、
日本政府の積極的な助成や、良質な労働力が熊本工場の迅速な建設につながったと、台湾の専門家は語っている。
TSMCの熊本進出を機に、九州は半導体関連の投資が続き、活気づいている。
経済効果は、20兆円を超えるとされ、「歴史的変革期で100年に1度のビッグチャンス」と沸きに沸いている。
地元では早くも第三工場建設に期待が高まっている。
「半導体を制するものが世界を制する」
デジタル技術だけでなく、軍事・防衛面でも欠かせない半導体の連携は安全保障に欠かせない。
多額の税金を投じて、迎えた台湾の巨頭。
世界大手として先端半導体技術をリードし、関連投資も呼び寄せて、九州は半導体特需に沸く。
一方では、宅地や農地が広がる小さな町は、工場の出現で生活環境が激変しつつある。
戸惑う住民も多い・・・
(次回へつづく)
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