介護報酬の改定 ~賃上げに追いつけない介護業界~
誰もが介護サービスの世話になる可能性はある。
自分のことだと思って、今、真剣に考える時かもしれない。
介護保険。
持続可能な制度として、将来に引き継ぐにはどうすればいいのか。
厚生労働省が、介護サービス事業所の収入に当たる介護報酬を来年度改定で1.59%引き上げる方針を決めた。
人材難が深刻な業界の処遇改善への一歩とはいえるが・・・
他の産業に比べると、介護の業界はなぜか、極端に給与などの待遇面が低い。
高齢者を手厚くお世話をしているのに、なぜか、国によって報酬は決められ、がんじがらめの業界である。
他の産業界は、ほぼしがらみはなく、稼いだだけ、企業に収入が入る。それが、社員に還元される。
だが、介護の世界は、おかしなもので、そうはいかない。
地方に目を向ければ、分かる話だ。
都会は若者が多くいて、企業もたくさんある。それだけに潤っている。
しかし、地方は、ほぼ高齢者が多く、発展しようにも、人手が圧倒的に足りない。
二極化が進み過ぎている。
厚労省の2022年の調査では、介護の仕事を辞める人が、働き始めた人を上回る離職超過に転じたという。
それはそうだとも言いたくなる。
国が現実をみていない証拠だ。
他業種で広がる賃上げに介護業界が追い付かないのは、公的な介護事業のサービス単価が、国の仕組みで決まっていることが一因と言われている。
最近の物価高によるコスト増への対応も困難で、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の利益率ははじめてマイナスに落ち込んだ。
事業継続を危ぶむ現場から悲痛な声が上がっているのに、なぜ国は真剣に耳を傾けないのか。目を向けようとしないのか。
2040年頃には、高齢化のピークを迎えようとしている。
介護サービスの需要は高まる一方。
このまま、地方を野放しにして、高齢者のことを真剣に考えなければ、本当にお世話をする人がいなくなる。
お世話をしたくても、お世話をする人の生活が成り立たない。
高齢者は生活ができなくなり、そんな生活困窮高齢者が、ちまたにあふれることだってありうる。
高齢者も病気などを抱える中でも、一人でなんとか生きていく覚悟もしなければならない時代がくるのだろうか。
そのための、介護保険なのだが・・
岸田首相は支払いの応力に応じて、支え合う「全世代型社会保障」を掲げている。
必要なら、負担増の選択肢も示して、国民に理解を求めることも必要だと思う。
今回の介護報酬改定では、訪問介護の基本料が下げられたことから、
在宅介護が破綻するといった現場からの悲痛な声が聞かれる。
住み慣れた地域で、
在宅生活を続けたい人の願いが断ち切られることがないように、
国には、適切な支援の枠組みを求めたいものだ。
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