親がボケた!?―あなたならどうやって乗り越える?― 認知症専門家からやさしい向き合い方を学ぶ


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はじめに:突然訪れる「親の変化」と、私たちの戸惑い

人生の中で、多くの人がいずれ直面する可能性があるテーマ――それが「親の認知機能低下」です。

昔はなんでも自分でできていた親が、
「あれ?この前も同じこと言ってた?」
「何度も同じ質問をされる」
「財布をどこに置いたかを全く覚えていない」
「料理の味付けが明らかに変になってきた」

そんな“ちょっとした違和感”から始まり、次第に心のどこかに浮かぶ不安。

「まさか…認知症?」

気づきたくないけれど、目をそらすこともできない現実。
しかし、ここで知っておいてほしいのは、

「親の“変化”は、あなたのせいではない」
「そして、これは“終わり”ではなく“新しい向き合い方の始まり”だ」

ということです。

本記事では、
● 親の認知機能低下に気づいたとき
● どんな心構えで、どう行動すればいいのか
● 家族の負担を減らし、みんなで乗り越える方法
● 介護崩壊を防ぐための「考え方」と「仕組み」

これらを“実体験・専門知識・社会制度”を交えて、丁寧に解説していきます。


第1章 「親がボケたかもしれない」…最初に訪れる“揺さぶられる感情”

「もしかして、親がボケた…?」
その一瞬の気づきは、多くの人にとって想像以上に大きな衝撃をもたらします。
昨日まで当たり前だった会話や行動が、どこか噛み合わない。
「あれ、こんな人だったっけ?」という違和感が胸にひろがる。
この最初の戸惑いこそ、家族が認知症と向き合う第一歩です。

最初に湧き上がるのは、多くの場合“ショック”です。
あれほど元気で頼もしかった親の姿と、目の前の現実が結びつかず、
心が揺さぶられます。
しかし、このショックは誰にとっても自然な反応であり、
決して「弱さ」ではありません。

次にやってくるのが“否認”です。
「きっと気のせい」「年相応の変化だろう」と、
心が現実を受け入れまいと働くのです。
否認は、防衛本能が正常に働いている証拠であり、
責める必要はまったくありません。

しかし、否認が続くと、
同じ質問を繰り返される場面や、普段と違う行動が増える中で、
思わずイライラしてしまうこともあります。
家族が怒ってしまう裏側には、
“親を失ってしまうかもしれない恐怖”が隠れています。
怒りは愛情の裏返しであり、介護者に非常に多い反応です。

そして多くの人が最後に抱えるのが“自責”です。
「もっと早く気づけばよかった」
「優しく接してあげればよかった」
そんな思いに押しつぶされそうになることもあります。
けれど、この感情こそ、
あなたが真剣に親と向き合っている証であり、
誰もが通る“自然な道”なのです。

揺れる感情は、あなたが親を大切に思っているからこそ生まれるもの。
ここからが、ゆっくりと向き合い始める大切なスタートなのです。

● ① ショック

最初は誰だってショックを受けます。
あれだけ元気で、頼り甲斐のあった親が…と。

しかし、これはごく自然な反応。
あなたが冷たいのでも、弱いのでもありません。

● ② 否認

「気のせいだろう」
「年だから少し物忘れが増えただけ」
「そんなはずない」

誰でもまず、否認します。
否認は心の防衛反応であり、悪いことではありません。

● ③ 怒り

気持ちに余裕がないと、つい怒りをぶつけてしまうこともあります。

「なんで覚えてないの!」
「何回同じ説明をさせるの!」

でも、この怒りの裏にあるのは、
“親を失うかもしれない恐怖”です。

● ④ 自責傾向

「もっと早く気づいてあげれば…」
「なんで優しくできなかったんだろう」

こうした想いに苦しむ人は非常に多いですが、
これはあなたが真剣に向き合っている証です。

――人間は、誰かを深く愛しているからこそ苦しむのです。


第2章 “物忘れ”と“認知症”は違う。まずは冷静に見極めよう

「最近ちょっと物忘れが増えたけど、これって大丈夫?」──多くの人が最初に悩むポイントです。

加齢による自然な物忘れと、病気としての認知症は、似ているようで実はまったく別物です。

「どこがどう違うのか」「どんなサインに注意すべきか」を具体例とともに整理し、見逃さないための“冷静なものさし”を一緒に確認していきます。

年齢を重ねると、誰でも物忘れは増えます。
しかし、認知症とは明確に違います。

● 【加齢によるもの忘れ】

・体験の一部を忘れる
・忘れたことを自覚している
・日常生活に支障はない

例:「昨日食べたメニューを思い出せない」

● 【認知症の可能性が高い忘れ方】

・体験自体をごっそり忘れる
・忘れたことを本人が自覚していない
・日常動作に変化が出る

例:「食事をしたこと自体を覚えていない」

● 気づくべきサイン

・財布・カギ・通帳を頻繁に紛失
・料理の手順がわからなくなる
・季節に合わない服装をする
・同じ質問を10回以上繰り返す
・怒りっぽくなる
・夜中に徘徊
・これまで興味のあったことがどうでもよくなる

1つではなく複数が重なるときは注意が必要です。



【専門家コラム】

大河内 晴臣(おおこうち・はるおみ)

東京未来大学 医療福祉学部・教授/認知症ケア研究室


認知症とは、単なる記憶障害ではなく、脳の神経ネットワーク全体の働きが少しずつ弱くなっていくことで、思考・判断・感情・行動に幅広い変化が生じる疾患です。代表的なアルツハイマー型認知症のほか、脳梗塞などが原因となる脳血管性認知症、感情の変化が先に現れる前頭側頭葉変性症など、いくつものタイプが存在します。

特に誤解されがちなのは、認知症が「本人の意志の弱さ」や「家族の接し方」によって起こる病気ではないということです。加齢、遺伝、生活習慣、脳の老化などが複雑に重なって発症します。つまり“どの家庭でも起こり得る普通の病気”であり、決して恥ずかしいことではありません。

また、早期発見によって症状の進行を抑えたり、本人の生活を安定させたりすることが期待できます。何より大切なのは、家族が「正しい知識」を持ち、「適切な支援」につなげること。本人が安心できる環境を整えるだけで、日常生活が驚くほど穏やかになります。

以下は、読者からよく寄せられる質問にお答えする形で、認知症への理解を深めるQ&Aをまとめました。


【認知症に関するQ&A:専門家が答える10の疑問】


Q1. 認知症と普通の物忘れの違いは?

A. 一番の違いは「体験そのものを忘れるかどうか」です。
普通の物忘れは“どこに置いたか”など一部を忘れるのに対し、認知症では“置いた記憶そのもの”が抜け落ちます。


Q2. 早期発見すると何が良いのですか?

A. 進行を遅らせる薬や、生活の工夫を早い段階から取り入れることで、「その人らしさ」を長く保つことができます。家族の負担軽減にも大きく寄与します。


Q3. 認知症は治る病気ですか?

A. 完全に治すことは現時点では難しいですが、症状を抑える薬や環境を整えることで、穏やかに生活できる期間を延ばすことが可能です。


Q4. 何が原因で認知症になるのですか?

A. 加齢・遺伝・生活習慣・脳血管障害・慢性炎症など、複数の要因が重なって発症します。特定の一つだけが原因というケースは少ないです。


Q5. 認知症になると性格が変わるのはなぜ?

A. 脳の前頭葉など「感情をコントロールする領域」が影響を受けるためです。怒りっぽくなるのも、本人の意思ではありません。


Q6. 家族がまずやるべきことは?

A. 責めない・抱え込まない・医療へつなぐ、の3つです。
状況を記録し、家族で共有することも非常に役立ちます。


Q7. 認知症の人にしてはいけないNG行動は?

A. 「なんでできないの?」と叱る、「違うでしょ」と否定することです。本人は混乱しており、責められると不安や興奮が強くなります。


Q8. 介護がつらいと感じるのは普通ですか?

A. もちろん普通です。認知症介護は“長距離走”なので、心が疲れて当然です。専門職に頼ったり、デイサービスなどを併用して負担を軽減してください。


Q9. 進行を遅らせる生活習慣はありますか?

A. 適度な運動、十分な睡眠、バランスの良い食事、社会参加(会話・趣味)、脳トレなどが効果的とされています。特に「会話」は脳を刺激します。


Q10. 認知症の親とどう向き合えばいい?

A. 「できることに目を向ける」姿勢が重要です。
完璧を求めず、ゆっくり寄り添うことで、本人の安心感が高まり、日常生活の安定につながります。

最後に 【大河内先生が語る「認知症との向き合い方」】

認知症を理解するうえで最も大切なのは、「脳の働きがゆっくり弱まっていくことで生じる“生活の変化”」だと捉えることです。決して本人の意志の問題ではなく、まして怠けているわけでもありません。脳のネットワークが少しずつ機能しづらくなっていく結果として、記憶や判断力、感情のコントロールが難しくなるのです。

身内に認知症の兆候が見えたとき、まず心掛けるべきは“否定しない・責めない”ことです。同じ質問を繰り返す、探し物が増える、料理の手順を忘れるといった行動は、本人自身が一番困惑しています。そのため、家族が感情的に反応すると不安が強まり、症状が悪化することもあります。ゆっくりと話を聞き、生活の中でできる工夫を一緒に考える姿勢が最も効果的です。

薬については、アルツハイマー型認知症では進行を遅らせる効果が期待できる薬がいくつか存在します。ただし、“魔法の薬”ではなく、「穏やかに生活できる期間を延ばす」ことが目的です。薬だけに頼るのではなく、生活リズム、運動、会話、社会参加といった“日々の刺激”を整えることが、治療と同じくらい重要になります。

認知症は“家族全員で向き合う病気”です。ひとりで背負い込まず、地域包括支援センターや専門職を積極的に活用することで、本人も家族もずっと穏やかに暮らすことができるようになるでしょう。

第3章 まず家族がやるべき“最初の一歩”

親の異変に気づいたとき、家族は「どう動けばいいのか」が分からず戸惑います。

感情が先に立つと、つい責めてしまったり、一人で抱え込んでしまったりしがちです。

ここでは、家族が最初に押さえておきたい基本のステップ──親を責めないこと、家族間で情報を共有すること、日々の様子を記録すること、そして専門医を受診すること──を、実践しやすい形で解説していきます。

① 親を責めない

最初に大切なのは、「責めない」こと。
認知症の進行は、本人の努力不足ではありません。

② 家族で共有する

自分一人で抱え込むと、必ず心が折れます。

・兄弟
・配偶者
・親戚

少しでも信頼できる人に状況を共有しましょう。
介護は“チーム戦”です。

③ 記録をつける

・いつ
・どんな行動
・どんな変化

簡単にメモするだけで十分。
診察時に大きく役立ちます。

④ 病院を受診する

内科 → もの忘れ外来 → 精神科 → 脳神経内科 などが候補です。

早期診断のメリットは大きく、
・進行を遅らせる薬
・生活改善の方法
・家族の負担軽減
が早い段階で整います。


第4章 認知症と診断されたあと、どう向き合うか

診断が下りた瞬間、多くの家族は「これからどうなるのだろう」と不安に押しつぶされそうになります。

しかし、そこから先こそが“新しい向き合い方”のスタートです。

ここでは、親の尊厳を守ることを軸に、「できなくなったこと」ではなく「まだできること」に光を当てる視点と、鍵や薬、予定管理などを“仕組みで支える”具体的な工夫について、分かりやすく紹介します。

診断後に最も大切なのは、
「親の尊厳を守る」という姿勢です。

● 親も“傷ついている”

「自分が自分でなくなる恐怖」
「家族に迷惑をかける不安」
「情けなさ・恥ずかしさ」

あなたが動揺する以上に、親は深く傷ついています。
だからこそ、ゆっくり寄り添う必要があります。

● できないことに目を向けない

できることに注目し、
「自分でできた!」という経験を増やすことで、
親の自尊心は守られます。

● 一緒に生活の型を作る

・鍵は決まった場所へ
・薬は一つのケースに
・予定は大きなホワイトボードに
・買い物リストを作る

“仕組みで支える”ことが最も効果的です。


第5章 あなた自身を守るための「心のケア」

認知症介護は、いつ終わるか見えにくい長期戦です。

真面目な人ほど「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い込み、気づけば心も体も限界に近づいてしまいます。

この章では、介護者が自分を守るための心の整え方──完璧を目指さないこと、時には“逃げてもいい”こと、専門職やサービスを頼ること、そして罪悪感との付き合い方──を、そっと背中を押すような言葉でお伝えします。

介護には“終わりが見えない苦しさ”があります。
その中で、あなたが壊れてしまわないための考え方をお伝えします。

● ① 完璧を目指さない

介護は理想通りにいきません。
70%できていれば十分すぎるほど立派です。

● ② 逃げてもいい

「疲れた…」と思ったら休んでいい。
介護はマラソンであり、短距離走ではありません。

● ③ 相談のプロを頼る

・地域包括支援センター
・ケアマネージャー
・訪問看護
・デイサービス

“第三者が入ると、家族関係が保たれる”
これは本当によくある話です。

● ④ 罪悪感を手放す

「もっと優しくできたのに…」
「今日も怒ってしまった…」

そんな気持ちが出てきても大丈夫。
介護者はみんな同じ道を通ります。

あなたも人間。
気持ちが揺れるのは当然なのです。


第6章 介護崩壊を防ぎ、家族全員で乗り越えるために

どんなに家族仲が良くても、介護が長期化すると、負担の偏りや価値観の違いから不満が生まれやすくなります。

その行き着く先が、いわゆる“介護崩壊”です。

金銭管理・病院同行・生活サポートなどを分担する方法や、公的サービスを組み合わせて負担を軽くするコツ、そして「親の幸せ」を家族全員の共通目標として共有するための考え方を整理していきます。

● ① 役割分担

・金銭管理
・病院同行
・生活サポート
・買い物
・連絡係

兄弟間で不満が生まれないよう、役割を明確に。

● ② 介護サービスの併用

介護の99%は「仕組み」の問題です。

父や母を守るためにも、
あなたの生活を守るためにも、
サービスに頼ることは決して悪いことではありません。

● ③ 親の“幸せ”を最優先にする

・安心して眠れる
・好きな音楽を聴ける
・庭の花を眺められる
・家族の顔を見られる

その小さな“幸福の積み重ね”こそが
親の心を安定させ、症状を和らげます。


第7章 認知症の親とともに生きる――これは“介護”ではなく“第二の親子関係”

認知症の進行とともに、かつての親らしさが少しずつ姿を変えていくのを見るのは、とても切ないものです。

しかしそれは、親子関係が終わることを意味しません。「守られていた子ども」から「親を支える大人」へと役割が移り変わる中で生まれる“第二の親子関係”という視点を紹介し、記憶が薄れてもなお残り続ける心のつながりについて、一緒に考えていきます。

かつては守られていた立場から、
いつしか“守る側”へと変わる。

それは悲しいことではなく、
人生の巡り合わせであり、親への恩返しでもあります。

親が記憶を失っても、
あなたの存在は決して忘れていません。

心は最後まで残ります。
触れる手の温もり、
優しく声をかけてくれる安心感、
笑顔を見せてくれる喜び。

たとえ名前が曖昧になっても、
あなたが与える“安心”は、親の心に深く届いています。


おわりに:あなたは今、とても大切な役目を果たしている

「親がボケた」と感じたとき、
心は大きく揺れます。

でも、ここまで読み進めてくださったあなたは、
もうすでに“向き合う強さ”を持っています。

・迷っていい
・泣いていい
・弱音を吐いていい
・他人を頼っていい

そして“あなたは一人ではありません”。

親の変化を受け止めながら、
自分の人生も同時に大切にする――
その両立こそ、これからの時代の“優しさの形”です。

どうか、あなたの日々が少しでも軽くなりますように。
あなたとあなたの大切な家族が、今日よりもっと穏やかに過ごせますように。



いかがでしたでしょうか?
本記事では、「親がボケたかもしれない」と感じた瞬間から、家族の心の葛藤、正しい見極め方、専門医へのつなぎ方、そして診断後の向き合い方まで、認知症の親と寄り添って生きるための視点を丁寧にお伝えしてきました。

認知症は“突然すべてが失われる病気”ではありません。
むしろ、多くの力はまだ親の中にしっかり残っています。
大切なのは、できない部分ではなく“残っている力”に目を向けてあげること。
そして、家族が穏やかに接することで、本人の不安は驚くほど軽くなることもよくあります。

日々の中でできる“小さな工夫”も、実は大きな支えになります。

・予定を大きく書いて目につく場所に貼る
・同じ場所に鍵や薬を置く
・料理や洗濯などを一緒に“ゆっくり行う”
・好きな音楽や昔話で安心できる時間をつくる
・無理をしない、怒らない、否定しない

これらはすべて、認知症の進行そのものを和らげたり、本人の表情を柔らかくしたりする効果があると多くの専門家が報告しています。

そして忘れてはいけないのは、あなた自身の心を守ることも同じくらい大切だということです。
家族が疲れ果ててしまっては、親を支えることはできません。
迷ったら、相談していいのです。
頼っていいのです。
介護は家族だけで背負うものではなく、社会全体で支えるべきものです。

認知症の親と向き合う日々は、決して楽なものではありません。
しかしその中で、生まれ変わるような新しい親子の時間や、これまで以上に深まる絆も確かに存在します。
たとえ記憶が薄れても、あなたの声、あなたの優しさ、あなたの手の温もりは、親の心に深く刻まれ続けます。

どうか今日から少しだけ肩の力を抜いて、
「ゆっくり一緒に歩いていけばいい」
そんな気持ちで向き合ってみてください。
あなた自身が穏やかであることが、親にとって何よりの安心となります。

本ブログを最後までご覧いただき、本当にありがとうございました。
あなたとご家族が少しでも穏やかに、少しでも笑顔で過ごせますよう、心から願っています。。。

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予防医学ch /医師監修 ウチカラクリニック

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