5年ぶりのJ2~鹿児島ユナイテッドの軌跡を追う~

5年ぶりのJ2~鹿児島ユナイテッドの軌跡を追う~

サッカーJ3の鹿児島ユナイテッドFCは昇格圏の2位を守り、5年ぶりとなるJ2復帰を決めた。

総得点数はリーグ3位の58。攻撃的なサッカーと安定した守備力で40試合近くを戦い抜いた。今季は黒星が多く土壇場での勝負強さが光った1年。

今年もあきらめず応援してきて、印象に残ったことがたくさんあった。悔しい思いもたくさんした気がする。

そこで、年末にさしかかり、しぶとく粘り強く戦った今季を振り返ってみることにした。

開幕戦ダッシュ

白波スタジアムに約6,000人が駆けつけた開幕戦。

J3初参入のFC大阪に開始すぐに先制点を許した。試合はそのまま取り返すことができず、0-1のまま終盤を迎え、後半45分あたりからユナイテッドの怒涛の攻撃が始まった。

コーナーキックからDF広瀬選手がヘディングシュートで1点。さらにその後DF薩川選手がゴール前でこぼれ球を拾って逆転ゴールとなった。

最後まで決して諦めないという選手の闘志が垣間見えた試合だったと思う。

この一戦のように、今季は終盤の強さが際立っていた。シーズン全体では、後半以降のゴールがほとんどだったと感じる。前半で先取点を決め、そのまま守りに入るという試合はほとんどなかったのではないか。

得点に関しては二桁得点が20試合近くあった。昨季の米澤選手みたいに二桁得点を挙げた選手が少なかったという印象だったが、誰でも、どこからでも得点につなげられたのが今季大きかった。

監督交代

8月22日、監督交代にユナイテッドが踏み切る。2期目の大嶽監督は序盤、今季最多の7戦負けなしという結果を残し、確かな足跡とチームに自信を付けた。

ボランチの起用に関しては、若手をボランチが入れ替わっていかないといけないという言葉を選手たちに伝え、「躍動感のある選手がゲームをコントロールしながらセカンドボールを回収できれば、目指すサッカーができる」と話した。

チームの若返りを図ろうとする積極的な姿勢も見せたのである。

だが、夏の3連敗が響いて無念の退任に追い込まれる。

戦術指導を担っていた大島ヘッドコーチが監督を引き継ぎ、8月末からチームの指揮を執り始めた。

選手に刺激を与え、監督再交代後はまたも7戦負けなし。

戦術面での大きな変化はなく、選手たちの間にも大きな混乱はなかった。

高い位置でのプレスや素早い攻守面での切り替えが健在ですぐに選手間に浸透していった。

「一人がミスしても近くの選手が奪い返すシーンが増えた。選手全員でボールを奪いに行く姿勢が感じ取られ、切り替えがいかに大事か選手全員で肌で感じることができたことが大きい」

選手の起用法や細かい戦術は2人の監督間で違っていても、攻守でアグレッシブなサッカーを浸透させたことは共通していた。そこに今季の鹿児島ユナイテッドの強さが見て取れる気がする。

守備

「得失点差や勝ち点差でこれまで何度も涙を流してきた」

チーム最年長の五領選手はそう振り返ったそうだ。

J2で戦った2019年。得失点差で及ばずたった1年でJ3に降格した。

昨季も勝ち点差1でJ2への昇格を逃した。

昨季はけがによる主力の途中離脱が痛手となりシーズン終盤に失速してしまった。これが痛かった。

主力の穴をカバーするだけの選手層がなく、それとともにDFの力も低下することになる。

シーズン後半は失点26。この点数を見ると、よくJ2に昇格できたものだと安堵と落胆が交錯する。

今季はどうだったか。

今季は全治半年以上の怪我人が出ず、守備も安定した。岡本選手、戸根選手、広瀬選手と力のあるセンターバックが揃い、誰が欠けても補うことができた。これが今季最大のポイントだったと感じる。

優勝逃す

5年ぶりのJ2昇格といえども、悔しいのはJ3優勝を逃したこと。

要因は昨季に続いて黒星の多さが露呈したことだろう。

全試合38試合の中で、優勝を決めた愛媛は7敗に対して、鹿児島は12敗。

やはり夏場の失速がシーズン最後まで響いてしまった感は否めない。夏の暑さにユナイテッドは弱いのか。

17節後は首位愛媛と勝ち点差1で2位に付け、25節以降は勝ち点差が12差まで開き、7位に沈んでいる。

2014年にJ3がスタートして以来、黒星が多いチームは昇格できていないというデータもある。

12敗もしながらJ2昇格を決められたのは、J3が混戦状態だったからだと思う。

今季からJ3とJFLとの入れ替え制度が始まったことで降格の危機感が各チームに生まれ、レベルが縮まっていると言われる。

これからどう進化するのか

鹿児島ユナイテッドは経験豊富なベテランが多いのも事実。若手に比べると、シーズンを戦い抜くには相当な体力がいるはずだ。

夏場に失速した昨季の反省を踏まえて、今季はシーズン開幕まで走り込みを多く入れ込み、体力向上に励んだ。

だが今季も夏場にやはり失速。改善には至っていない。

J2で戦い抜くには、選手の体力向上だけでは限界がある。

全試合38試合を戦い抜くためには、選手層の厚さが不可欠だ。誰がけがをしても、だれが不在になっても、誰かがカバーできる逸材をもっておくこと、それが今の鹿児島ユナイテッドに必要なことだと思う。

相手チームに戦術が読まれているときの戦い方にも工夫がいる。相手もプロ。戦術は見ればすぐに盗まれる。そこを見抜かれないようにするために工夫や改善点が必要なのだ。

下位チームとの対戦で取りこぼしを減らすなど、チーム独自の戦術を構築して選手間でもっと浸透させなければならない。上位のチームやJ1やJ2の格上のチームからの移籍選手などから戦術のアドバイスを受けることも工夫策の一つではないだろうか。

プロ同士で改善すべき点はいくつもある。

まとめ

2019年のように、たった1年で降格する失態だけは避けなければならない。

J3降格を経験したチームだからこそ、絶対に降格しないという強い意識を持って、来季に臨んでほしいと強く願う。

ファンも「強いユナイテッド、勝てるユナイテッド」を期待している。

負けはできれば、ホームで見たくない。

J2で「勝てるチーム」にどう進化していくのか、これからも応援を続けていく・・・

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