東京への転入超過なぜ進む?~韓国はまだ深刻~
総務省が公表した2023年の人口移動報告によると、
東京都が転入者が転出者を上回る転入超過となった。転入超過の数は6万8285人。
前年の3万8023人から80%も増え、新型コロナウイルス感染拡大前の19年(8万2982人)に近づいた。
どれだけ、人口の一部が東京に集中しつつあるのかが分かる。
20、21年は超過数が減少していたものの、東京一極集中が再び加速した形だ。
東京都以外の、40道府県では人口が流出する「転出超過」となっている。
総務省担当者によると、
「コロナ禍が明け経済活動が活発化したほか、就職や進学に伴う若年層の東京への移動が増えた」と分析した。
地方では人口流出により、医療・介護や公共交通など、さまざまな分野で人手不足が深刻化しており、抜本的な対策強化が欠かせない。
内閣府によると、
男性と女性ともに20~24歳の年齢階層が、いずれの年においても最も転入超過数が多いとされる。
また、その数は男女共に増加傾向にあり、かつ女性の数が男性を常に上回って推移している。
この年齢階層には大学や専門学校等を卒業し、主に就職をきっかけに東京圏へと移動する者が多く含まれるものと推察されるという。
そして、転入超過の背景として雇用に着目し、東京圏の雇用はその他の地域と比較してどのような特徴があるかをみた。
雇用者数の増加率について、産業別に寄与度の分解を行った結果をみると、
東京圏の男性の場合、「情報通信業」、「医療、福祉」、「卸売業、小売業」といった産業の増加寄与が大きくなっている。
一方、東京圏の女性の場合には、「医療、福祉」、「卸売業、小売業」、「教育、学習支援業」の増加寄与が大きい。
結果的に、東京圏への人口移動の背景として、東京圏の方が、地方圏に比べて幅広い業種で雇用機会があることが影響している可能性が考えられる。
引用:内閣府HP
地方に比べ、仕事が多い分、したい仕事が見つかりやすいという理由が大半というところだ。
若者が進学や就職に当たって、地元を離れる選択をした理由とは具体的にどのようなものか調べてみた。
まず、進学に当たって地元を離れた理由については、
「親元を離れて、一人で生活したかったから」「自分が関心のある分野が学べる学校が、地元に無かったから」「自分の学力に見合った学校が、地元に無かったから」といった理由の比率が高い。
男女差に着目すると、
女性は「自分が関心のある分野が学べる学校が、地元に無かったから」と「地元を離れて、新しい人間関係を築きたかったから」という回答が多く、男性は「自分の学力に見合った学校が、地元に無かったから」。
こうしてみてみると、進学にあたって地元を離れる理由には、一人暮らしや地元以外の地域への憧れといった理由もあるが、自分の学力や関心に合った学校が地元に存在しないことも大きな理由の一つということになる。
地元を離れて東京圏で就職した人々に対して、その理由を尋ねた結果、
「自分の能力や関心に合った仕事が、地元で見つからなかったから」「親元を離れて、一人で生活したかったから」「給与の良い仕事が、地元で見つからなかったから」といった理由の回答が高い。
男女別に比べると、「親元を離れて、一人で生活したかったから」、「私生活(趣味や娯楽など)を充実させたかったから」といった理由では、特に女性の回答が男性を上回っていたという。
一方、「給与の良い仕事が、地元で見つからなかったから」、「自分の能力や関心に合った仕事が、地元で見つからなかったから」といった理由では、男性の回答が女性を上回っていたという。
こうして見てくると、東京への転入超過は女性が男性を上回る傾向がみられることが分かった。
また女性の転入超過数は、特に20代前半の若者が多いため、就職が重要な転入の契機になっていると推測される。
地元を離れて東京圏で就職した理由を尋ねた意識調査によれば、
親元を離れて一人暮らしをしたい、
私生活を充実させたい
といった回答が、男性よりも女性の場合に特に多い結果となっている。
その他にも、東京都で働く女性の所得が他の大都市と比較して高い傾向が強まっていることが、女性の東京への移動を促進する要因となっている可能性も指摘されている。
女性がより働きやすい環境を求めて、首都圏へ転出していく理由もこれで分かった。
東京圏の人口は我が国全体の人口が減少する中にあっても、主に他の地域からの転入超過によって増加傾向が続いている。
転入超過数のうち最も大きな割合を占めるのは20代前半の若者であることから、就職が転入の一つのきっかけになっているものと推察。
東京圏に就職した理由を尋ねた意識調査の結果をみると、
仕事に関する理由だけではなく、親元を離れて一人暮らしをしたい、あるいは私生活を充実させたいといった理由を挙げた回答も多くなっていた。
そうした傾向は特に女性に強くみられ、近年の転入超過数において女性が男性を上回るといった特徴は、地元を離れた新しい生活への関心の高さも背景の一つになっていると考えられる。
韓国でも、ソウルを中心とした首都圏に人口が集中し、地方の衰退が深刻な問題になっている。
首都圏の人口は韓国全体の50%以上を占め、日本の首都圏の人口比を上回る。
韓国南部の都市、釜山(プサン)市。
九州に近く日本からも多くの観光客が訪れるほか、韓国最大の港湾都市としても知られる。
人口は約330万人とソウルに次ぐ「韓国第2の都市」だが、人口減少に歯止めがかからないという。
特に目立つのが若者の流出だ。
釜山市によると、18~34歳の人口は2015年の約74万人から、2021年には約69万人にまで落ち込んだ。
一方で、65歳以上の割合は約22%と、主要都市で最も高い。
人口減と高齢化によって雇用が減り、若者たちはより良い働き口を求めて、首都圏を目指すという悪循環に陥っている。
20年の韓国企業売上高で、上位100社に入る釜山の企業はなく、
23年の入試では釜山の大学15校のうち14校が定員割れとなった。
韓国メディアによると「消滅危険地域」となった自治体では、バスターミナルが廃業するなどの影響が出ているという。
港湾都市として物流を支え、携わる労働者や求人数も多かったが、機械によるオートメーション化によって、雇用は減る方向にあるという。
打開策として、釜山は30年万博を誘致しているが、その効果は未知数だ。
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